2002年(平成17)6月29日 六甲道駅南再開発地区公園の国際コンペデザインコンペにチーム灘クミン案が入選(神戸新聞)
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【灘の昼ごはん378食目】フツーでハッピーがいい
泉一貫楼が70余年の歴史を閉じた。一貫楼ロスで心にぽっかりと穴が空いた。
どれくらいの穴かというと、クラスのそんなに可愛くもなく目立たないフツーの女の子が転校してしまった感覚に近い。いつも見えてたはずの彼女の何気ない笑顔だったり、ふと見せるもの悲しげな表情、決して彼女のことを好きなわけではない。ただそういう日常がなくなる喪失感はボディブローのように効いてくる。灘郵便局の帰り道「大石一貫楼」の暖簾をくぐる。大阪万博の年に開店したというからかれこれ半世紀。灘区内に5軒ほどあった一貫楼もついにここだけになってしまった。僕にとってラーメンは特別なものではない。なので並んで食べたりわざわざ遠くまで行ったりする気はない。自分の住んでいるフツーの街にフツーのラーメン、いや中華そばがあるということだけでハッピーな気持ちになれる。細目の麺、細目のもやしに薄めの焼き豚、鶏ガラだしと炊き醤油を合わせたスープという絶妙のフツーなバランス。素材がどうののこだわりがどうのというおどしも媚もない、店構えも接客も声高に叫ぶことなくただただフツーで丁寧。そんなフツーの中華そばがある街に住めることに感謝したい。
大石一貫楼「Aセット」
●場所
神戸市灘区鹿ノ下通2-3-10
●本日の昼ごはん
・ラーメン
・炒飯(小)
700円
【灘の細道20】灘南波乗りロード
JR摩耶駅ができて早2年。駅周辺ではマンション工事が進む。
東灘貨物駅があったころにくらべてすっかり変わってしまったね、なんて言ってしまうのは簡単だ。
しかし変わってないもの、いや変えられないものがある。それは地形だ。
JR摩耶駅周辺は南北の高低差だけではなく河川による東西の高低差、それに鉄道敷地が複雑に絡み合い「ブラタモリ」のロケが来てもおかしくない地形マニアにとってはたまらないエリアなのだ。戦後に作られた駅の南を東西に走る道は地元ではダンプ道と呼ばれていた。道幅が広く車の往来が少ないのでスピードが出しやすい。その上アップダウンが激しく接近するダンプカーがまるで波乗りをしているかのように沈み込んでから急に現れるという危険な道だった。昭和50年代、道路で遊ぶ子どもたちを交通事故から守るためにダンプ道沿いの日米珈琲本社の東隣には「ちびっこ広場」という小さな空き地もつくられた。
天気が良かったので勝手に「波乗りロード」と名付けてみた。この道は山下達郎が似合う。「BIG WAVE」を聴きながら都賀川から「タカバシサンセット坂」に向けて車を走らせれば夏はすぐそこだ。
【灘の朝ごはん5食目】喫茶ドニエ
今日は2018年6月6日、水曜日。水道筋のコーヒーショップ「ドニエ」。昨日の夜からあきれるくらい雨が降っている。今のところ晴れという概念の暗示すらない。
「ねえ。畑原市場のアーケード、なくなっちゃうのかしら?」と彼女は僕に訊ねた。
「黄身次第だね。」まずは少しはぐらかして白身から食べるのがベターだ。
「それはそうと。」僕は香ばしく焼かれたーそれは黄身にとってはどうでもいいことかもしれないートーストの耳を少しちぎるとパン屑が床に落ちた。
「やれやれ」と心の中で呟く。
「これは参考意見として聞いて欲しいんだけど。」
僕は丁寧に焙煎されたUCCドニエブレンドのサイフォンコーヒーを一口飲んでから言った。
「黄身は半熟でないといけない。」
「そんなことより。」
彼女は面倒臭そうにロースハムーそれは伊藤ハムではないかもしれないーを脇にやりながら言った。
「私のことどう思ってる?」
その言葉が彼女の口から出たときにはもうすべてが終わっている。
僕はトーストの耳で半熟の黄身をすくって食べると「それは、黄身が決めて欲しい。」と言って席を立ち、勘定を払いーそれは480円だったかもしれないーラヴィン・スプーンフルの『水道筋汗かきえびす音頭』を口ずさみながら店を出た。
「人間の後半生は、通常、前半生で蓄積された習慣のみで成り立つ」
(フョードル・ドストエフスキー)
僕はドニエで半熟の黄身をトーストですくって食べ続ける。それは素敵なことだ。
誰がなんといおうと。
●場所
神戸市灘区水道筋5丁目3−3
●本日の朝食
スナックモーニング
・ホットコーヒー・トースト・ハムエッグ
480円
【灘の昼ごはん377食目】パンダをしばきに原田まで
喫茶店に行くことを「茶しばく」というが、灘区ではパンダを見に行くことを「パンダしばく」と言う(略してパンしば)。それだけ街とパンダが近いということだ。灘区は動物園を普段使いすることができる獣住近接の街だ。「時間空いたからちょっとパンダしばこか?」なんて気負うことなくゲタ履きでパンダに会いに行ける街なんてそうない。パンダといえば上野動物園と白浜アドベンチャーワールなわけで、誰も神戸の灘にパンダがいることなんて知らない。王子動物園?どこそれってなもんである。ポートピア81から数えると40年近いパンダ歴があるにもかかわらず、だ。でもそれがいい。できることならパンダがいることも隠しておいて欲しいくらいだ。平日の昼間、閑散とした園内でダラダラしている旦旦を見ると「お前、灘で良かったよな」と声をかけたくなる。すっかり初夏の陽気の土曜日、区界のミュージアムカフェでカレーをしばいた。店名の「ぱんだかふぇ」というフワフワした語感の斜め上をいく横尾忠則デザインのドクロ皿というカオス感が灘的だ。大きなガラス窓から道路の向こう側に目をやると賑わう王子動物園。観光客に見つめられてちょっと困った顔をしている旦旦が目に浮かんだ。
ぱんだかふぇ「
ぱんだらんち」
●場所
神戸市灘区原田通3-8-30 横尾忠則現代美術館 1F
●本日の昼ごはん
・グリル野菜のカレー
・サラダ
・コーヒー
1080円