王子公園の北西に「王子わんぱく遊園」という小さな公園がある。震災前に「仮面ライダー神戸版」のロケが行われたといえばピンと来る灘クミンがいるかもしれない。公園自体は何の変哲もないが、この公園から東に抜ける細い道がいい。通称「王子グリーントンネル」と呼ばれている(いや、呼んでるのはきっと僕だけに違いない)癒しの道だ。特に今年のような暑い夏はここを歩きたくなる。ほんの数秒で歩ける道だけど是非ゆっくり味わいながら歩きたい。天気のいい日は天井からシャラシャラと木漏れ日が射す。葉っぱに反射した緑の光が体を包み、まるでウクライナの「恋のトンネル」を歩いているような気分になる。行ったことないけど。王子弓道場側に目をやる。タイミングが合えば葉っぱの間から清楚な弓道着に身を包んだ凛々しい弓道女子を見ることもできる。女子が着る道着で一番キュートは弓道技でないか?そんなことをぼんやりと考えながら歩くともう出口だ。ああ、もう終わりなのか。来し道を振り返っても誰もいない。幸福は一瞬だ。それは人生に似ている。
しかし、地下道、ガード下、地下河川、市場、商店街、僕の好きな空間はほとんどがトンネル状の空間なのはなぜだろう。理由はわからない。王子グリーントンネルを振り返りながら松鶴家千とせ風に呟いてみた。「きっと前世がトンネルだったのだろう」と。